花よ、気高く咲き誇れ
「蓮井さんに憧れる。人の気持ちがわかって、誰かを傷つけることがない強さを持っている」
「本当にそう思ってる?人を傷つけないで生きている人間なんていないわよ」
「それでも、人の気持ちを汲めるなら、それだけ踏みにじることもないと思う」
真摯な瞳がまっすぐ私を見る。
こういう哲学的な話は私は苦手だ。
「私じゃなくて憧れているのは宮原さん、違う?」
ズバリと切り込む。
私は敏いというのはあながち間違いではない、その証拠に水谷君は困ったようにため息を吐いた。
「宮原さんと同じゼミなんだって?すごいでしょ、彼。何でもできて、人望があって、誰にでも優しくて、でも千里だけを見てて、守ってて」
「確かにね。宮原さんは完璧な人だね。鼻にかけることもなく、みんなに好かれるだけの要素を持ってる」
水谷君の表情は仮面を被ったかのように何の感情も読み取れない。
それでも私との会話をする意志はあるようで、一拍の後、口を開く。
「宮原さんを見ていると兄貴を思い出す。格好良くて、何でもできる兄貴なんだ」
姪御の話の時の表情と重なった。
話すことへの躊躇いと怯えが伝わったから、話しやすい空気を作ろうと少し高めの声を出す。