花よ、気高く咲き誇れ
目線をずっと合わせていたら話しにくいだろうかとか、あまりに真面目くさった顔で食いつくように聞かれるのは鬱陶しいだろうかとか。
今までなら、無意識で出来ていたはずのことが上手くできなくなる。
それでも、何とか水谷君の話を聞きたいと一字一句聞き逃さないように耳を傾ける。
「その頃、兄貴は高校生で俺は小学に入ったばかり。ボールをもつことさえやっとで、戦えるレベルじゃないのに、わからなくて、毎日、近くの公園で一人で練習して週末に兄貴を連れて行って勝負して。それを小学卒業する頃までずっと。結局、一度も勝てなかった」
「それじゃ、6年も?すごい!!お兄さんも良く付き合ってくれてたね」
「俺にとっては真剣な勝負だったけど、兄貴にとっては子守りでしかなかったことに気付かなくて」
「勝ちを譲ったりしなかったのは、お兄さんが水谷君の気持ちを汲んだからじゃないの?」
茶化したりとかしないで、弟に真剣に向き合った素敵なお兄さんだと思う。
「そういうのが全て、俺を下に見ているようにしか思えなかった。結局、社会人になって兄貴が家を出て以来、溝が大きくなって。俺が一方的に敵視しているだけで兄貴にとってはただの反抗期としか」
お兄さんへのコンプレックスが異常に強い、と私は言葉を詰まらせた。