花よ、気高く咲き誇れ
きっと、水谷君のそういう気持ちを汲んでお兄さんは接していたけど、水谷君にはそれが自分より上だと思い知らされて。
では、お兄さんが勝ちを譲ったり、歳の差のまま子供扱いしたのなら?
それはそれで水谷君を傷つける。
はっきり言って、やりにくい弟だ。
そんなことを思っていると、水谷君は苦笑した。
「そっくりじゃないんだ。結局、兄貴はできた人で、俺はダメな弟。歳が離れているせいで、比較されないのが救いなのかもね」
爽やかな立ち振る舞いはどこか危うくて、今にも崩れてしまいそうで、だから救いたい。
私が救ってあげたい。
水谷君が抱えるものを分かち合いたい。
「……ね。バスケは結局やめたの?」
「いや。もう日課になっててずっと一人で練習してた。中学の頃は助っ人なんかもしてて……」
「それなら、今ならお兄さんに勝てるんじゃないの?」
できたお兄さんに一回でも勝てたのなら、コンプレックスから抜け出すきっかけになるはず。
「……そうかもね。でも、いいんだ」
「え?」
「勝負はついてる。だから、もういいんだ」
「………………」
誰も寄せ付けない、反論することさえ許されない、そんな空気。