花よ、気高く咲き誇れ
水谷君は完璧なまでに私に、いや、人に線を引いている。
「そう。もう、どうすることもできないんだ」
悟った顔で自分を戒めるように呟く水谷君に私は爆発した。
私は椅子をなぎ倒すがごとく立ち上がり、水谷君を親の敵とばかりに睨み付けた。
「ね。4限終わったら付き合って」
「蓮井さん?」
「つべこべ言わずに付き合って。北門で待ち合わせだから」
水谷君を置き去りにして私は学食を立ち去った。
律儀な水谷君を一方的な約束にも関わらず、北門へと歩いてきた。
場の勢いで言ってしまって、後悔していた私はほっとする。
「私と隆弘、バスケサークル入ってるの知ってるでしょ?付き合ってよ」
おせっかいなのは重々承知だ。
それでも、ぐだぐだ考えるより身体を動かすべし、だ。
「……蓮井さん。気を使わないで。ただの昔話だから」
慌てる水谷君の腕を掴みながら、体育館へと連れて行く。
「私、嫌なの。今さらかもしれないけど、そうだったとしても良いじゃない?ここで練習してお兄さんに勝てたら、水谷君は吹っ切れるよ」
どんなにすごいお兄さんだか知らないけど、一回でも勝てたらそれが自信になる。
バスケが彼を救うきっかけになると思った。