花よ、気高く咲き誇れ
「いや。蓮井さんに言われて思い出した。兄貴に負けたくないってバスケやってた時は楽しかったことを。だから、今日だけ仲間に入れてもらうよ」
虚を突かれてる私に優しく笑いかけた水谷君はコートのほうへと歩いて行った。
どうして、彼は私を引きずり込むような笑顔を向けるのだろう。
彼じゃないとダメだと心に刻み込まれていく。
水谷君の後ろ姿を追うように私もコートへと歩いていた。
水谷君という珍しいメンバーが加わったことに興味を示したサークルの人たちは次々に中断し、一つのコートへと集まっていく。
水谷君は赤のゼッケン。
互いのメンバーを見て、一先ずほっとする。
水谷君の実力は未知数であるが、メンバーの選定からチームに差が生まれないように均等に割り振られている。
自分の実力だけで決まらないのがチーム戦だ。
隆弘は、お手並み拝見だな、と私の隣へと立った。
正直、隆弘が出ないことに安心したのだ。
このサークル内で一番上手いのは隆弘。
それを目の当たりさせるのは、コンプレックス病に悩む水谷君にはいささか酷だ。
そんなことをつらつら考えていると、試合開始のホイッスルが鳴る。
爽やかな水谷君が爽やかに走っていると浮かれていられたのは、ほんの数分。
あとは、隆弘と同じく唖然と水谷君を目で追うだけだ。