花よ、気高く咲き誇れ
水谷君は軽やかに高く飛ぶ。
そしてシュートまでのタイミングが早い。
本当に背の小さな頃からやっていたからなのだろう。
1on1に慣れている。
試合の時の水谷君が不慣れだったのだと感じるほどに。
「お疲れ」
水谷君に控えめな言葉をかけタオルを渡す。
微妙な空気を醸し出していた。
それはそうだろう。
うちのトップの隆弘がサッカー少年と言われる水谷君に負けたのだ。
はしゃいで喜ぶことなど出来るはずもない、それこそ隆弘のことを思えば尚更。
水谷君は、控えめに微笑んでタオルを受け取る。
彼も何も言えるはずがない。
人の感情を必要以上に気にする水谷君だ、この空気の悪さが自分が勝ってしまったことに起因すると簡単にわかってしまう。
「……葵。おめぇーすげぇウザい。バスケは苦手って言ってたくせに」
俯いていた隆弘が、水谷君の目を真っ直ぐ見る。
その目には怒りしか見て取れない。
理性というものがない。
「お前はいつだってそうだよな。何でもできるからって涼しい面して。人が努力している姿を嘲笑って」
「そんな風に思ったことなんて一度もない。隆弘のバスケをいつも……」
努めて冷静な水谷君に怒りに駆られて隆弘は大声で言葉を被せる。
「ああ!!葵はいつも俺がバスケしている姿を見て『スゴい、俺にはマネできない』
って言ってたよな。そりゃ、そうだろうよっ。下手くそなのにバスケが得意だって、顔している俺なんかマネできねぇよなっ!!」
「……隆弘」