花よ、気高く咲き誇れ
「蓮井さん。ありがとう。でも、俺が本当に悪かったんだ。人の気持ちを汲み取ることができなくて、隆弘に不愉快な思いをさせたのは俺。だから、もうやめて欲しい」
さっき簡単に振り払えたはずの水谷君の腕は、今度はビクともしなかった。
怒りに駆られていた私の心は一気に静まる。
水谷君にとって、こんな風に怒ることは迷惑だと言うことに気付いた瞬間だった。
「隆弘。信じてくれないかもしれないけど。隆弘の試合を見て、チームを動かしている姿に本当に憧れていた。自分にないものを持っていて羨ましく妬ましく思うことはあったけどバカにしたことなんて一度もない」
周囲はもはや言葉を発するどころか、息一つ立てないように固まっていた。
「俺は人をどうしても傷つけてしまうみたいなんだ。本当に、ごめん。ごめん、隆弘」
隆弘を真っ直ぐ見る水谷君の姿を私は呆然と見ていた。
誰にも何も言わせぬ雰囲気。
それが、私たちとの差で隔たりのように感じてしまう。
その後、水谷君はサークルのみんなに本当に申し訳ないと謝って体育館を後にした。
「水谷君!!」
水谷君は立ち止まり、振り向いた。
無視されたらどうしようと思っていたからそれが杞憂に終わった安堵。
そして、水谷君が立ち止まったことで、言うべき言葉を見つけないまま追いかけてしまったことに対する焦りが私の中で大きくなる。
ごめん、と謝るべきだろうか?
でも、あれは隆弘が悪い。
幼馴染としてあいつを叱るのは当然だ。
水谷君でなくても私はああしていた。
そう、謝る必要なんてない。