花よ、気高く咲き誇れ
「隆弘の言ったこと真に受けたりしないでね。負けたことが悔しかっただけで、反省しているから」
水谷君を追いかけようと走りかけた時、隆弘がひどく打ちひしがれている姿が視界に入った。
それは、バスケに負けた悔しさではなかった。
隆弘が悪いのに、水谷君は自分を責めている。
ほら、やっぱり。
「いや、悪いのは俺だよ。隆弘だけじゃない、色んな人を傷つけてきた。誰でもあることかもしれないけど、それ以上に俺は人の思いを踏みにじって来た。どうしようもない人間だ」
苦く笑う水谷君は茶化しているようだけど、全然笑えてなかった。
「……そんなことないよ。水谷君は人を気遣い過ぎる」
「気を遣っても、気にかけてても、汲み取れないんだ」
「私がそんなことない、って言っても納得しないだろうから、もうどうでもいいわ。あなたが人の気持ちがわからないダメ人間、って思ってるならそれでいい」
もう、この押し問答は面倒だ。
何を言っても水谷君は自分を否定する。
「でもね。あんたは頑張ってる。試合の最後に言った言葉届いてた?『スゴい。あんたはデキる子』。いつも一生懸命よ。わかっている人もいるんだから。お兄さんのこと知らないけどあんたは負けてない。努力だけは負けてない」
私は水谷君の頭を撫でた。
背伸びをして、ゆっくりと。
何となく、そうしてあげたくなったのだ。
自分のことを否定し続ける水谷君を私だけは褒めてあげようと。
これからもずっと。
思いが届かなくても。