花よ、気高く咲き誇れ
明日の昼ごはんは私のお弁当と約束を交わした。
憤然としながらも軽い足取りで、スーパーを物色する。
水谷君に一泡吹かせたくて、彼女らしいことがしたくて。
確かに、二年前の調理実習で悲鳴を上げていた。
私ではなく、周囲が。
だが、それは二年前の話。
今は違う。
それ以来、ラーメンを茹でるくらいしか料理をしていないけど、断じて今は違う。
歳を重ねて人は成長するのだから、見よう見まねで出来るはず。
「お母さん。明日、彼氏にお弁当持って行く約束したから、キッチン開けておいて」
里芋がつるつるして掴みにくい、ほら、また滑って落ちた。
再度、挑戦と思ったら食器が割れる音がした。
お母さんの湯飲みがフローリングの床に転がり、お父さんはごはんを喉に詰まらせもがいていて、兄貴はマヌケ面で箸を加えたまま動かない。
えい、もう面倒くさい、串刺しだ。
里芋をぶすりと箸で刺し、口に運ぶ。
うん、美味でございます。
「ハナ……ワンモアプリーズ」
「ハナ……プリーズプリーズ」
「ハナ……アイドントアンダースタンド」
蓮井家は生粋の日本人だ、と心の中でため息を吐いてもう一度同じことを言う。