花よ、気高く咲き誇れ
「………………」
「………………」
水谷君の無言にズキリと胸が痛む。
「で、できると思ったんだけど。思ったより難しくて……」
言い訳をしている自分がみっともなくて、声がしぼんでいく。
持って来るんじゃなかった。
定番の卵焼きでさえ、形が崩れている上に焦げすぎ。
ベーコンのアスパラ巻もベーコンが焦げているし、もはやベーコンにアスパラが巻かれていない。
コロッケに至っては、自分でさえ何を作ったのかわからないほど、正体不明の物体として弁当箱の中で収められている。
結局白米に梅干しを一つのせた主食だけがまともなだけ。
それさえ、お母さんがおにぎりを四苦八苦作る私に、日の丸弁当にしなさい、と見かねてお弁当箱に白米を詰めたもの。
持って来なければ、惨めな思いをしなくて済んだのに、どうして持って来たのだろう?
「ごめん!!これは私が食べるから!!水谷君は学食で!!もちろん奢るよ!!」
努めて明るく笑って振る舞った。
恥ずかしくて、弁当を隠そうと手を伸ばすと、水谷君がひょいっと持ち上げた。
「蓮井さんらしいお弁当だな、って思って。気を悪くさせてごめん」
「私らしいって……やっぱり期待してなかった?」
「うん。蓮井さんのことだから炭化したものを持って来るのを予想してたら、どんぴしゃでさ」
爽やかな口調でとんでもないことを言う水谷君。