花よ、気高く咲き誇れ
善は急げ
家に帰り、私は胡坐に頬杖を付きながら考えた。
そこで私は水谷君に一目ぼれしたことに気付いた。
隆弘と正反対の色白で繊細そうな人。
何というか、脆そうで救ってあげたくなるような。
そんな部分に惹かれたように思えた。
いやいや、それは私が言うところの草ではないか、世間で言う草食系の典型みたいではないか。
それなのに何故だか、好きになっていた。
恋に理由付けは面倒くさい、いやいや、不要だと、今後の計画に思考移動。
隆弘とはどういう付き合いだろうか、同じ学部?同じサークル?
隆弘の手を借りるのは最後だ、とりあえず見つけたところをすかさず捕縛……
いや、声をかけて会釈する程度の仲から話す仲になろうではないか。
そのチャンスは出会いから1週間後に来た。
私は次の日から血眼になって探したが広いキャンパスで正体も良くわからない男を見つけるのは野生の勘でも難しかった。
2日、3日と経ち、隆弘を使うかと思ったのを踏ん張り、出会った曜日と同じ火曜日。
学食付近を捜索していたら星はいた。
彼の姿を見た瞬間、ドクンと一度心臓が跳ね上がったが持ち前の度胸で抑え込む。
水谷君も私に気付いたようで、目を細め笑いかけてくれた。
会釈仲で終わらすわけには行かない私は怯えさせないように突進を避け、至って普通に偶然を装って近づいた。
「こんにちは。……水谷君だっけ?」
この1週間、水谷葵、水谷葵と念仏のように呟いていたが、あくまで今思い出したように言う。