花よ、気高く咲き誇れ
「期待通りでごめん。こんな食べられないお弁当なんて持ってきて自分が恥ずかしい」
「母親に頼んだりしないで蓮井さんが作ってくれたのがわかるお弁当だから嬉しいよ。どんなお弁当でも絶対蓮井さんは約束を守って持ってきてくれる、って思ってた。これも期待通りだ」
笑いながら話す水谷君は本当に爽やかで、こんな最悪な弁当なのに嬉しそうで。
余計惨めだ。
「まずそうって思ったでしょ?」
「すごいお弁当だな……とは思った。蓮井さんは鋭いからお世辞言っても無駄だから正直に言うと」
「鈍感でも、このお弁当で褒められたらお世辞……ううん、嫌味だってわかるわよ。あっ!!」
恨みがましく水谷君を見ていると、彼は焦げすぎの卵焼きを口に入れた。
「見た目は悪いけど、味は美味しい。ね、これからも作ってよ」
「え?」
「今日が人生で一番の失敗作のお弁当になるよ。これから、蓮井さんの上達していくお弁当を食べたいんだけど、ダメかな?たまにで良いんだ」
水谷君の優しさだって、わかってる。
こんな弁当を持って来た私の弁当なんて二度と食べたくないはずなのに。
それでも、その優しさに甘えたい。
ここで投げ出すなんて私らしくないし、そんな私に水谷君はがっかりすると思う。
「わかった。これから、水谷君と食べられる時は毎回作るから。今後に期待して」
水谷君に笑いかけると、安心したような笑いが返された。
「ところで、これは何?」
「コロッケ」
「コロッケ!?さすが蓮井さん、斬新だ!!」
意味の分からない水谷君の称賛におかしくて涙が零れそうになった。
そう、ただ、おかしいだけ。
それ以外に理由なんてない。