花よ、気高く咲き誇れ
「あんた、本当に変わったわよね」
グロスを塗るため鏡を覗き込む私を頬杖を突きながら見ている綾香。
夕食をしに出かけるということで、化粧をしているのをしげしげと眺めてくる。
綾香は間違いなく美人。
それに引けを取らないように、今日は一段と念入りだ。
「……何が?」
そ知らぬ顔で問いながら、余分なグロスをティッシュで拭う。
「綺麗になった、ってこと。男からの視線が熱いでしょ?」
「ウザいくらい。男って、本当にバカ。見た目に惑わされて」
「そのバカな男に水谷君は入らないわけ?」
長い髪を耳にかける綾香の仕草は色っぽい。
耳にかけられず、零れ落ちる細い髪がきらきらと透ける様を横目で見ながら、少しは伸びてきた自分の髪を指で摘まむ。
今度、トリートメントもやろうかな、そんなことを思う私を私自身が一番不思議に感じている。
「水谷君が見た目に騙されてくれるなら、整形でも何でもしてる。まぁ、必要ないけど」
「確かにね。素材が良いとは思ってたけど、ここまで女に化けられたのはハナの執念の賜物。そんなにいい男かしら?彼?」
「発言に異議があるけど、こうなれたのは綾香のおかげでもあるから流してあげる。どう考えても水谷君はいい男でしょ?あの性格の良さと言ったら」
「顔良し頭良し運動神経抜群で性格良しなんてありえない。マンガじゃあるまいし」
「現実にいることもあるのよ」
メイクが終わって髪を整えて完成。