花よ、気高く咲き誇れ
「現実にいるとするなら、何かの欠点はないと。そうでないと人間じゃない」
「完璧ではない。彼にも弱くて繊細な部分がある」
「なるほど。そういうところに母性本能がくすぐられたのかしら、ハナは?そういうタイプだとは思っていなかったから驚きね」
そんなことを言いながら、どうでもよさそうに雑誌を閉じる綾香。
母性本能とは無縁な私以上に綾香は無縁だと心の中だけで思う。
「救ってあげたいとは思ってる。でも……いいや、お待たせ、行こう」
「隆弘とのほうが私はお似合いだと思うわよ。報われない恋にあえて行く必要もないと思うけど?」
綾香の切れ長な目に相反する大きな黒い瞳が私に注がれる。
遠慮を知らないやつ、とため息を吐く。
だからこそ、こうして一緒にいるわけだけど。
「……報われて私は水谷君と付き合ってる」
「わかってるくせに。水谷君の気持ちはハナに向いてない。あえて、隆弘との仲を壊して、二人の関係も壊してまでも、付き合っているハナと水谷君が不思議だわ」
知ってる。
隆弘とはあの日以来言葉を交わしていない。
そうなるのは覚悟していた。
私は水谷君を選んだ。
でも、水谷君と隆弘も微妙な関係になった。
水谷君が何か言ったわけではないけど、それくらいのことはわかる。
それでも、私と付き合ってくれているのは、きっと今芽生えつつある感情からだ。
そう私は信じている。