花よ、気高く咲き誇れ
「綾香。私は水谷君のことが好きだし、水谷君も私のことが好き。だから、付き合ってる」
これ以上立ち入るな、と強い視線で綾香を見ると、綾香はあっさりと視線を外した。
「そうね。水谷君もハナのことが好きね。それは伝わるわ。大事にされてハナは幸せだってことくらい。だから、隆弘もどうにもできない」
「隆弘はただの幼馴染。いずれこうなる日が来てたわよ。いつまでも仲良しなんてありえない。お互い恋人ができたら疎遠になるのが当たり前」
「敏くて嘘が下手なハナ。気付かないフリをずっとあんたができるとは思わない」
行きましょう、と綾香は立ち上がりドアを開けた。
その後ろを追いながら思う。
気付かないフリをしているわけじゃない、今知らないフリをすれば、いつか、そう、時が経った時に笑い話になると思っているから私は何も言わないだけ。
時が経てば、それは色褪せて、そんなこともあったね、と笑い合えると知っているから。
成長して、私たちは賢く狡くなっていく。
あんただって、そうでしょう?
そう心の中だけで問った。