花よ、気高く咲き誇れ
「ほ、ほ、本当に、落ち着いて」
水谷君は面食らい、仰け反る。
「あ、あぁ!!寄りによってあんな姿を!!全然、色気なしだし!!むしろ下着姿の方がスタイルの良さがわかってもらえたのにぃ~~!!」
「……え?問題って、そこ?」
「な、わけあるかっ!!」
私が真っ赤になって叫ぶと、水谷君は吹き出した。
玄関先でしっかり阻まなかった罪を忘れているな、と睨み付けるが。
「とにかく、落ち着いて。お茶入れるからさ」
そう言いながら、私を優しく抱きしめる。
「…………うん」
私の雄たけびも何も、水谷君はあっさり封じ込め、ドキドキに変えてしまうのだ。
「ごめんなさいね。この子が何も言わないから。本当にバカ息子で」
「母さん。俺は何度も帰れ、って言ったはずだけど?」
「それだけじゃ、わかるはずないでしょう!!こんな綺麗なお嬢さんとお付き合いしているなんて聞いてないんだから!!ね?蓮井さん?」
「身に余るお言葉ですわ。おばさま」
私は、初対面の失態を取り除くべく、最高の私を演じる。
メイクも服装も立ち振る舞いも全てにおいて、持てる全てを費やした。
「あら、そんな他人行儀なんて寂しいわ。葵が女性とお付き合いなんて考えても見なかったけど、蓮井さんみたいな子が近くにいたら、それは付き合いたくなるわね~」
にやにや顔で腕を突かれた水谷君はこれみよがしにため息を吐く。