花よ、気高く咲き誇れ
「母さんは結局何をしに来たの?用がなかったら、俺たち帰るけど?」
「冷たい息子でしょ?全然、家にも帰って来ないでね。だから、心配して様子見に来たんでしょ?まぁ、彼女がいたら、それは一人暮らしは快適よね~」
おおらかなお母さんらしく、私は胸をなで下ろした。
水谷君の育ちの良さからして、ふしだらな娘とか思われていたりと心配していたが杞憂で終わりそうだ。
「もう子供じゃないんだから」
「学生が何言ってるのよ。帰りたくない気持ちもわかるけど、たまには顔見せなさい。みんな、心配してるのよ?その時は蓮井さんも是非に」
「ありがとうございます。おばさま」
これぞ淑女の微笑みの見本と言われる、完璧なスマイルを返す。
「おばさまじゃなくて、智子って呼んでちょうだい。私も下の名前で呼ぶから。あら?そう言えば、下の名前お伺いしてなかったわ」
「蓮井華と言います。智子さん」
同じく淑女スマイルをしたが、水谷母は虚を突かれたように呆然とした。
チラりと気遣わしげに水谷君を見たような気がするが、水谷君は顔色を変えずにコーヒーを飲んでいるから気のせいだろうか?
やっぱり、呼び方が馴れ慣れ過ぎたか。