花よ、気高く咲き誇れ
「申し訳ありません。馴れ馴れしいですよね」
「あら!ごめんなさい!!智子って呼んでちょうだい。いやね、孫が同じ名前で、それで驚いてしまって」
「お孫さん?水谷君のお兄さんの子供さんですか?えっと、確か、2歳になるとか」
「葵がそんなことを?ええ。そうなの」
何だか、途端に歯切れが悪くなる水谷母。
水谷君をチラチラ気にしていると言うか。
「そういえば、そろそろハナの誕生日だ。バレンタインデーだったよね?」
何でもない風に水谷君は話に加わるけど、最初に姪の話をしてくれた時の強張りが今になって気になった。
「……小柳さんのところと一緒に祝おうと思うんけど、あんたは無理よね?バレンタインなんてね」
「……あの~。私のことを気にしているのなら、全然平気ですので。お気遣いなく。いつでも会えますし!!」
バレンタインデーは恋人と過ごすのが世間一般的。
だから、水谷母は私を気遣って……と思うところだが、どちらかというと水谷君を気遣っているように私には思えた。
「そうだね。無理だね。ハナには何か贈っておく」
コーヒーが苦いフリをして顔を顰めた水谷君の表情に私は何故だか胸が痛んだ。