花よ、気高く咲き誇れ
「葵のことよろしくお願いします。蓮井……ハナさんみたいな女性が葵の傍にいてくれると安心だわ」
駅前で別れる時、水谷母は深々と私に頭を下げた。
その言葉や表情が私に全幅の信頼を置いているように思えて、居た堪れなくなった。
「そんな買い被りです!!本当はガサツでうるさくて。猫を被って申し訳ありませんでした!!」
正直、結婚相手でもない私に、いや、私は水谷君との将来を考えているけど。
まだまだ先の話だ。
それを水谷母もわかっているのに、こんな風に頭を下げられることに驚いた。
「あなたの明るさが周りも幸せにするのね。過保護だと思われるでしょうけど、葵が家を出て行って本当に心配してたの。ハナさんといることで、葵は楽しそうだから私の心配は杞憂だったわ」
「本当に過保護だよ。大学生で一人暮らしなんて普通だろ?まぁ、どうせ俺が立ち直れないままだと思ったんだろうけど」
立ち直れないとは、お兄さんが関係しているのだとわかった。
「まぁね。もう心配はしないから、帰って来なさい。出来ればハナの誕生日に。本当に、みんなが心配してるのよ。その時はハナさんも是非来てちょうだい」
それじゃ、と頭を下げて水谷母は改札へと消えて行った。