花よ、気高く咲き誇れ

切り捨てたもの





「先輩、申し訳ないけど付き合っている人がいるんで」



「そっか。そうだよな。悪い困らせて」



 男って単純だ。


 先輩の姿が消えてからため息を吐く。


 高校時代から同じ部活で仲良くしていて、それこそ。



『ハナは女に見えないよな!絶対、こいつにだけは欲情しない』



 なんて笑っていたくせに。


 それが大学で再会して、私の姿が変わるや否やこれだ。


 高校からの先輩という立場にかこつけて、携帯番号を聞かれ、食事に誘われ、最後に告白と来た。


 はっきりって高校時代はそれなりにモテていた先輩だ。


 そこそこ格好良いが水谷君に遠く及ばないのなんて、わかりきっているはずなのに。


 そんな水谷君と付き合っている私に告白とは、フられるための告白でしかない。


 まさかのマゾ?


 先輩が立ち去った後、そんなことをつらつらと綾香に話しながら歩く。









「そうかしら?倉木さんもそこそこな顔じゃない」



「……綾香。それなら、あんたにあげようか?」



「いらないわよ。というか、高校時代にフってるし」



「…………綾香サン。本当にあなたはイイ性格をしていますね」



 やっぱり倉木先輩はマゾだ。


 私のから笑いに、ありがとうと嘯きながら、あら?と声を出した。



< 74 / 105 >

この作品をシェア

pagetop