花よ、気高く咲き誇れ
切り捨てたもの
「先輩、申し訳ないけど付き合っている人がいるんで」
「そっか。そうだよな。悪い困らせて」
男って単純だ。
先輩の姿が消えてからため息を吐く。
高校時代から同じ部活で仲良くしていて、それこそ。
『ハナは女に見えないよな!絶対、こいつにだけは欲情しない』
なんて笑っていたくせに。
それが大学で再会して、私の姿が変わるや否やこれだ。
高校からの先輩という立場にかこつけて、携帯番号を聞かれ、食事に誘われ、最後に告白と来た。
はっきりって高校時代はそれなりにモテていた先輩だ。
そこそこ格好良いが水谷君に遠く及ばないのなんて、わかりきっているはずなのに。
そんな水谷君と付き合っている私に告白とは、フられるための告白でしかない。
まさかのマゾ?
先輩が立ち去った後、そんなことをつらつらと綾香に話しながら歩く。
「そうかしら?倉木さんもそこそこな顔じゃない」
「……綾香。それなら、あんたにあげようか?」
「いらないわよ。というか、高校時代にフってるし」
「…………綾香サン。本当にあなたはイイ性格をしていますね」
やっぱり倉木先輩はマゾだ。
私のから笑いに、ありがとうと嘯きながら、あら?と声を出した。