花よ、気高く咲き誇れ
「隆弘?久しぶりじゃない」
寒さに縮こまっていた身体が上を向く。
綾香の声に振り向いた隆弘は私がいたことで、視線を逸らした。
むっ、とした私はつかつかと隆弘に歩み寄り小突いた。
「あんた、何よ!?久しぶりに会った幼馴染に対する態度がそれ!?」
髪をひっぱり上げようとすると、その手が撥ね退けられた。
あまりに冷たい手の温度に息を呑んだ。
それは私への絶対的な拒絶。
「気安く触るな。お前だろ?距離を置こうって言ったのは」
「はぁ!?恋人じゃあるまいし、何言ってんの?」
勝手に部屋に入ったり、お互いのベッドでマンガを読んだりするのが問題だと言っただけだ。
会えば、幼馴染。
ちょっとしたコミュニケーションくらい許されるだろう。
「俺はお前と極力関わりたくない。葵ともな。二人して、おままごとみたいに馴れ合っていて反吐が出る」
「………………そう。」
もう何も互いに話すことはない。
幼馴染の縁もこれまでということだ。
私は後悔なんてしない、絶対に。
隆弘より水谷君を選ぶことに迷いなんてない。
そう、悲しがるのは我儘でしかない。
自分に言い聞かせるように手を握りしめてコートのポケットに仕舞い込んだ。
隆弘が遠ざかっていくのを不思議な気持ちで眺めた。
ずっと一緒なんてありえない。
だけど、隆弘とはずっと一緒にいると何故そんなことを思っていたのだろう。