花よ、気高く咲き誇れ
「ごめんなさい。急にびっくりしましたよね?」
「あ、いいえ、とんでもないです!!私も蓮井さんとお話したかったから」
小柄な先崎千里は本当に小動物だ。
昔飼っていたハムスターに似ていると少しだけ気が緩んだ。
「単刀直入に伺います。ズバリ、水谷君と先崎さんの間に何かあるんでしょうか?」
わたわたしていたハムスターはケーキを喉に詰まらせた。
でも、それが日常茶飯事であるかのごとく胸を叩き飲み物を口に含んでみせた。
私が勧めるまでもなく。
「何にもありません。昔は良く遊んだ、いとこ同士です」
「それだけには見えませんでした。宮原さんのこと敵視していたし、先崎さんのことを好きなようにも見えました」
「それは違います。彼を敵視していたのは蒼君に似てるから。あ、葵君のお兄さんなんですけど」
「それは聞いてます。お兄さんにコンプレックスを持ってるっていうことぐらいは」
「蒼君は本当に何でもできるんです。それでいて偉そうにすることもなくて誰にでも優しいし。だからこそ、葵君にとっては重荷で……って、もう葵君から聞いてますよね」
小さく柔らかそうな手で彼女は口元を抑える仕草をした。
「宮原さんとお兄さんが似ているだけじゃないような気がするんですよね。先崎さん自身に水谷君は何か思うところがあるような」
ずっと思っていたことを口にすると、先崎さんは呆然と私を凝視していた。
その姿に戸惑っていると、次の瞬間には優しく微笑んでみせた。