花よ、気高く咲き誇れ
「上手く言えないけどさ。千里って面倒な感情とか言葉にできないものをさ簡単に表現したり、凡人が抱えているものを全部何だかほわほわにするんだよな。心地良く」
良くわからないよな、最後にそう言って宮原さんは愛おしそうに笑っていたことを思い出した。
宮原さんが言っていることが、その時はまったく理解できなかったけど、今少しだけわかるような気がした。
言葉では言えないけど、何となく。
そう、言葉では表現できない何か。
そんなものはこの世の中たくさんある。
私はそれを今抱えている。
でも、先崎千里はそういった煩わしくて面倒なものを何でもないようにしてしまうのかもしれない。
「葵君に蓮井さんの何に惹かれたのか、聞いたことがあるんです」
質問には答えてはくれなかったけど、うやむやにしようとしているわけではないと思ったから私は続きを促した。
「……彼は何て答えました?」
「全てを受け入れてくれるところ」
それと、と先崎さんは私に真っ直ぐな瞳を向けた。
圧倒されるような瞳なのにどこか心地良い。
「気高いところ。自分に自信を持っている姿に惹かれた、って」
「自分のことを嫌いになりたくない、私はそう思ってます」