花よ、気高く咲き誇れ
『まさか!!とんでもないことです!水谷君が愛想を尽かしても私が愛想を尽かすなんてありえません!』
私の大きな声にも、水谷母は、上品に笑っている。
普通、ど肝を抜かれて電話口から遠ざかるところなのにさすがは水谷母。
『あのね。電話したのは孫の誕生日のことで。葵、何か言ってる?』
『あの、いえ、何も。私から帰るように勧めるべきなんでしょうけど、申し訳ありません』
水谷君が帰りたくないなら、帰らなくていい。
でも、それを水谷母に言うのは憚られた。
『いいえ、本当にあなたが葵の傍にいてくれて良かった。ハナさんが葵を支えてくれていてくれなかったら、私は心配してばっかりだったから』
『あの……』
『ハナさん?』
どうして水谷君は家に帰ることをそんなに怯えているのだろうか。
そう聞こうとして、やっぱり言えなくて、口を噤んだ。
でも、水谷母は何を言わんとしたのかわかったのだろうか、ゆったりと話始める。
『過保護な親だとお笑いになるでしょうね。葵は蒼……葵の兄に比べて危なっかしくて、10も離れているのに対抗意識がすごくて。そんなところも含めて感情豊かでみんなに好かれていて自慢の息子だったの』
本当に親バカでしょ?なんて水谷母は笑う。