花よ、気高く咲き誇れ
いじけていて、自分に自信がなくて、うじうじ悩んで。
そんな男は嫌いなはずなのに、水谷君のそういう姿を見せて欲しい。
それが本当の水谷君なら私はそんな彼が一番好きだ。
「確かに女々しいし、鬱陶しい発言。けどね、そういう水谷君、嫌いじゃないから」
目を見開いて私を凝視する水谷君の頭を抱えるように抱きしめた。
濡れた髪が何だか心地良い。
水谷君の全てが心地良い。
「変わる必要なんてない。水谷君がダメな男でも。私が傍にいる。だから、そうやって無理におどけてみせないで」
「やっぱり蓮井さんは俺に甘くなったよ」
くすくすと予期せぬ笑い声がするのと同時に、抱きしめ返される。
「その優しさに頼っても良い?来週、一緒にうちに来て欲しい」
「……無理する必要はないと思うけど?」
彼のお兄さんに会ってみたいとは思う。
けれど、水谷君にとっては何よりも恐ろしいことなのだろう。
自分がどうしようもない人間だと思い知らされることが。
「いつまでもこのままじゃいけないから。蓮井さんがいてくれて本当に良かった。ありがとう」
一つの選択で未来は変わる。
きっとこの時、水谷君が実家に行くと決めた瞬間に私の未来は大きく変わった。
気付かなくて良いことに私は気付くことになってしまったのだ。
知らなければ、苦しむことがなかったのに。
水谷君に抱きしめられながら、野生の勘が疼いたのは一週間後の予兆だったのだ。