花よ、気高く咲き誇れ
「自分で決めた?どうして今さら。それなら、あの時……」
「葵。やめろ。言いたいことがあるなら俺が聞く」
水谷君とは対照的にお兄さんの声ははっきりしていて水谷君の言葉は遮られた。
「言いたいことがあるなら聞く?違うだろ!?本当はお前が俺に言いたいんだろ!?自業自得だって。俺なんか消えてなくなれって、って」
「…………何も変わってないんだな」
「ああそうだよ!!俺はあの時のまんまだ。気に入らないなら殴れよ。あの時みたいにさ!!一層のこと俺のことを殺してくれれば……」
わけがわからない私はただ茫然としていた。
というより、二人の間でしかわからないことなのだろう。
そして、誰もがわかることは楽しく幸せな誕生日会の雰囲気なんてどこにもないこと。
「後悔するようなことこれ以上するな。それこそ、あの時の二の舞になる。ごめん。ちょっと葵と話してくる」
場の空気を察したお兄さんが水谷君の腕を引っ張って立たせた。
二人が外へ出ると、一同は取り繕うように、何もなかったかのように明るい和やかな雰囲気を取り戻した。
それが大人の対応だ。
それなのに、私は上手く笑えない。
椅子から立ち上がることさえできないくらいに動揺していた。
いや、傷ついていた。
結局、水谷君を救えていなかった。
水谷君とお兄さんが言う、『あの時』がわからないけど、水谷君を変えてしまったその日から、彼は抜け出せていない。