花よ、気高く咲き誇れ
花もきっと
そして、それは水谷君は私のことを…………
「ハナおねえちゃん。これ」
名も知らぬ花。
一本の花。
目の前に一本の花が差し出された。
小さくて穢れの知らない柔らかな手に一本の花。
そして、俯く私へ花を捧げるハナちゃんを支えるのは先崎さんと雰囲気が似ているとても柔らかく心地良さを与える水谷君の義姉。
この人が…………
水谷君の…………
「ハナおねえさんはわらってて。おはなあげるから」
「貴女が笑っていないと葵は悲しむわ。それに……」
花もきっと切ないわ。
どうしてだろう。
私は涙を堪えることできなかった。
差し出された花を受け取る手に水滴が落ちていく。
切なく揺れる花は本当に私のようで。
私の涙が花びらからこぼれ落ちる。
「ハナさんには、気高く咲き誇っていて欲しい。葵にとってそういう存在なんですって」
水谷母の声に、私もそうでありたいと心の中で返す。
本当は、泣くような私なんかじゃない。
本来は、私もこの花も気高く咲き誇っているのに。
どうして…………
彼と出会うまでは咲き誇っていたはずなのに。
花から落ちる自分の涙が私をこんなにも切なくさせる。
それも、全部水谷君のせい。
私が水谷君をこんなにも好きで仕方がないせいなのだ。
でも、こんな私は好きじゃない。
咲き誇っていたい、理想の私でいたい、水谷君の目に映る私は気高くありたい。