背中合わせ、そこから一歩。



部長からは妻子がいるなんてこと、今まで仕事でも食事でも何一つ聞いたことがなかったし、そんなそぶりもほとんどなかった。

こんな素敵な人なんだから彼女さんくらいいるんだろうなとは思っていたけれど。



「昨日はだいぶ酔っていたから信じてもらえてないかもしれないけれど、お前のことが好きなのは本当だ。だから、嫁と子供がいることをお前に知られたくなかった。
すぐには無理だが、必ずお前を幸せにする。
俺と付き合ってくれ。」



好きな人からの願ってもなかった告白を、
彼が妻子持ちだからという理由で断れるほど
私は純粋ではない。


むしろ、結婚願望がなかった私にとってはこういう関係がベストなんじゃないか。
この際昼ドラに出てくるような悪女になってしまおうか。
そんな風に考えていた。



こうして
彼との関係が始まった。





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