背中合わせ、そこから一歩。
「……」
少しの無言に、
慌てて我に返ってなんてことを言ってしまったのか、ことの重大さに気づいた。
好きだなんて言うつもりなかったのに。
気になってる程度のはずだったのに。
いつの間に、本音がつい口から出てしまうほど彼を好きになってしまっていたのか…。
ましてや今日出会ったばかりの人に。
こんなことを言ってしまっている自分が自分で信じられなかった。
「あ、えと、聞かなかったことに!」
「俺はあなたの方こそ素敵な人だなと思って見てましたよ。何気ない言葉をきちんと拾ってあげて会話にしてたり、飲み終わったグラスを店員さんが持っていきやすいように並べたり、さりげなく気を配ってて。」
そんな風にわたしのことをしっかり見てくれてる人がいるだなんて思いもしていなかった。
なんだか、今までのこの人生のストレスとか鬱憤が、
彼のこの言葉で全て帳消しになったくらいに
胸の奥がすっきりして、どうしようもなく嬉しかった…。
「初対面でこんな気持ちになってること伝えたら引かれるからやめとこうと思ってたのに、そんな告白みたいなことされたら…俺だって言っちゃいます。あなたのこと好きになりました。」