魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
思い返せば、家での蓮様は普通に会話をして下さるし、私が余計なことをしない限りは追い払うこともないのだ。
特別私を睨みつけることも、拒絶することもなく――かといってものすごく優しいわけでもないのだけれど――接して下さっている。
尻すぼみな私の声に、蓮様は僅かに目を見開いた。
「……僕が、君を?」
「蓮様は以前、執事はいらないと仰っていましたし……学校では、私とあまり関わりたくないご様子でしたので」
「それは――」
「ええ。今のお話を聞いて、蓮様が私のことを考えて下さっていたのだと分かりました。ありがとうございます、嬉しいです」
意図せず頬が緩む。
でも、今くらい許されて欲しい。蓮様とようやくきちんと向き合えた気がして、本当に清々しかった。
「……そうじゃ、なくて」
「はい?」
表情筋を引き締めることを諦め、あえて満面の笑みで彼を窺う。そうしていると、何だかすごく嬉しくて気持ちが浮ついて、声色も明るくなった。
蓮様はちらりと視線だけこちらに寄越して、言いにくそうに口を動かす。
「執事はいらないって言ったのは、その時の話だし……そのあと、君をちょうだいって葵に言ったの、君も聞いてたでしょ」
「えっ」