魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
不意打ちの発言に、かあ、と頬が熱くなる。
そっぽを向いた蓮様の横顔が、いつもより幼く見えた。
「『君をちょうだい』? 蓮ってそんなこと言うキャラだっけ?」
先程振り切ってきたはずの声が、再び背後から飛んできた。
友人を茶化す口調に、蓮様が険しい顔で噛みつく。
「はあ? 椿、お前――」
「まさか二人が主従関係にあったとはなあ~、さすがにそこまでは想像してなかった。言ってよ、水臭いな」
「どうせ揶揄ってくるだけでしょ」
「しないよ。本気ならね」
本気? と、蓮様が眉をひそめる。
椿様は爽やかな笑顔を張りつけたまま、容赦なく爆弾を投下した。
「蓮、耳真っ赤だよ。照れてるの?」
「うるさい!」
蓮様が照れている!?
一体なぜ、と彼の様子を不躾にもまじまじと観察してしまった。そんな私の視線に気が付いたのか、蓮様の手が伸びてくる。
「む!?」
「……何じろじろ見てるの」
彼の右手が、私の両頬を軽く挟んだ。
眉間に皺を寄せる蓮様は、物凄く虫の居所が悪そうである。
「あー、こらこら。蓮、女の子に八つ当たりしちゃだめだよ」
「元はと言えば椿のせいなんだけど」
「ええ~?」
蓮様の耳は未だに少し朱色がかっていて、それが何だか微笑ましかった。
私のご主人様は、少々可愛らしい一面もあるらしい。