魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


不意打ちの発言に、かあ、と頬が熱くなる。
そっぽを向いた蓮様の横顔が、いつもより幼く見えた。


「『君をちょうだい』? 蓮ってそんなこと言うキャラだっけ?」


先程振り切ってきたはずの声が、再び背後から飛んできた。
友人を茶化す口調に、蓮様が険しい顔で噛みつく。


「はあ? 椿、お前――」

「まさか二人が主従関係にあったとはなあ~、さすがにそこまでは想像してなかった。言ってよ、水臭いな」

「どうせ揶揄ってくるだけでしょ」

「しないよ。本気ならね」


本気? と、蓮様が眉をひそめる。
椿様は爽やかな笑顔を張りつけたまま、容赦なく爆弾を投下した。


「蓮、耳真っ赤だよ。照れてるの?」

「うるさい!」


蓮様が照れている!?
一体なぜ、と彼の様子を不躾にもまじまじと観察してしまった。そんな私の視線に気が付いたのか、蓮様の手が伸びてくる。


「む!?」

「……何じろじろ見てるの」


彼の右手が、私の両頬を軽く挟んだ。
眉間に皺を寄せる蓮様は、物凄く虫の居所が悪そうである。


「あー、こらこら。蓮、女の子に八つ当たりしちゃだめだよ」

「元はと言えば椿のせいなんだけど」

「ええ~?」


蓮様の耳は未だに少し朱色がかっていて、それが何だか微笑ましかった。
私のご主人様は、少々可愛らしい一面もあるらしい。

< 101 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop