魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
椿様が言いつつ、いただきます、と一口サンドイッチをかじる。途端、彼の動きがぴたりと止まった。
「ね、言ったでしょう。百合、料理だけは昔からだめなんですよ」
「……うーん、なるほど」
二人からの何とも言えない視線に、「ごめんなさい」と肩を竦める。
楓いわく、私は味音痴らしい。
でも、料理がだめ、と評価されるのは心外だ。別にできないわけではない。ただ、毎回味の感想が芳しくないだけであって。
あいにく自分で食べる分にはさほど不味く感じないので、大人しく一人で消費することに決めた。
と、横から手が伸びてくる。
「えっ、蓮様……!」
彼は綺麗な指先でサンドイッチを一つ攫うと、躊躇することなく口へ運んだ。
私はといえば、ひたすらに焦るしかない。
「何してらっしゃるんですか! こんなもの、召し上がらなくても……!」
今しがた繰り広げられた会話を聞いていなかったんだろうか。あ、いやそうだ。聞いてなかった、とそもそも最初に仰っていた。
自分の口から「不味いので食べないで下さい」と申告するのもなかなかにメンタルブレイクだけれど、そんなことを気にしている場合ではないだろう。
「何って、君が作ってきたんでしょ。自分で差し出してきたくせに」