魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


どうりであまり痛くないし、濡れた気がしないなと思った。まさか彼が下敷きになっていただなんて。

すぐに彼の上から退いて、葵様に再度怪我がないか確かめてから、蓮様の元にしゃがみ込む。


「足が……あ、いや手も! 痛いですよね……ごめんなさい、あの、とりあえず」

「佐藤」


蓮様が顔を歪め、私を呼んだ。彼の手が頭にのる。


「落ち着いて。僕は大丈夫だから。……ちょっと、痛かったけど」


ぽんぽん、と軽くあやすようにたたかれて、感情がごちゃ混ぜになってしまう。
蓮様は私の顔を覗き込むと、呆れたように息を吐いた。


「泣くほどのことじゃないでしょ」

「え、だ……だって、本当に大丈夫ですか!? 私、絶対重かったですよね!?」

「重かったけど、君みたいに貧弱じゃないから平気」


さらっと毒を吐かれたような気がするけれど、今はそんなのどうでもいい。
何度もしつこく「大丈夫ですか」と聞いて、蓮様はその度に「大丈夫」と律義に答えて下さった。


「君は?」

「えっ?」

「怪我、ないの?」

「は、はい! 蓮様のおかげで、何とも……」


そう、と頷いた蓮様は、草下さんに視線を投げる。


「草下、葵つれて先に戻って。さすがに、そろそろみんな探し疲れてるだろうから」

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