魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



「蓮様、食後にデザートはいかがですか?」

「今は間に合ってるかな」

「ではお茶を……」

「ごめん、僕もう行くから」


立ち上がった蓮様に、慌てて手元を片付ける。


「放課後、校門前でお待ちしておりますので!」


遠ざかる背中にそう投げかければ、彼が振り返らずに片手を挙げて応えた。
後ろ姿を見送り、再び腰を下ろす。受け取ってもらえなかったアイスティーをちびりと飲んで、目を伏せた。


「蓮、行っちゃったねぇ」


椿様が間延びした声で言う。はい、と答えた自分の声色は、随分気落ちしていた。

昼休みが終わるまでは、まだ時間がある。少し前まではもっとのんびり昼食をとっていたのに、蓮様は最近すぐにいなくなってしまうのだ。


「お忙しいんでしょうか……テストはまだ先ですよね?」


今日は珍しく、楓も不在だ。
ああ見えて――と言ったら失礼だけれど、彼女はすごくしっかりしているから、生徒会に所属している。月に一度の会議だとかで、駆り出されているらしい。


「俺が教室戻ってからも、特に忙しそうには見えないけどね。まあ何か理由があるんじゃないかな」

「そうですか……」

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