魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
連休が明けてから、蓮様とのやり取りや会話が何となくぎこちない。それは私側に問題があるのだと思って、せっかく心の平穏を保てるようになってきたのに。やはり主人を「推し」だなんて、そう思うのは失礼なのだろうか。
「椿様、質問なんですけれど」
「うん?」
「私が蓮様の強火担でいるのは、ご迷惑なんでしょうか」
「……うん?」
椿様の首がどんどん曲がっていく。
彼も先日の私と同様、「強火担」は初耳だというので、楓の言葉を借りて説明しておいた。
「ふぅん。百合ちゃんは、蓮の強火担なんだ」
「そうなんです。私は蓮様の強火担なんです!」
断言した私に、椿様は「でもさ」と話し出す。
「百合ちゃんがそんなに尽くしても――例えば今みたいに世話焼いても、蓮はふらっと行っちゃうんだよ。それって、虚しくない?」
「虚しい、ですか……」
蓮様に専属執事だと言ってもらえて、すごく嬉しかった。やっと認めてもらえた、彼の役に立てるのだと思って。
それを剥奪されたら、きっと悲しくなるんだろう。虚しい、とも思うかもしれない。
彼から何かを与えてもらいたい、とは願っていないけれど、自分が差し出したものを受け取ってもらえなかった時、確かに今は少し寂しかった。
「ねえ、百合ちゃん」