魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



応接室に通された私たちは、竹倉さんから説明を受けることになった。
木堀さんが淹れてくれた紅茶の匂いがふんわりと鼻孔をくすぐる。


「改めまして――本日からお二人には半年間、五宮家の執事として勤めていただきます。半年の試用期間後、こちらとご本人の意向をすり合わせまして、場合によっては本契約を結ぶこともございます」


見習い執事、といった形だけれど、お給料も出るし、部屋も与えてくれるそうだ。まず生活に困ることはないだろう。
あとはこの半年間、努力して五宮家に認めてもらって、この先も働いていけるようにしないと。

たったいま手渡したばかりの履歴書を目でなぞった竹倉さんが、静かに問う。


「草下様は九条(くじょう)学園に通っておられるのですね」


えっ、と思わず喉から掠れた声が漏れた。

九条学園は、いわゆる執事育成学校だ。五年前にできたばかりの新しい施設である。


「はい。来年の春に卒業ですが」


受け応えた草下さんの言葉に、私は姿勢を正した。
ということはつまり、草下さんは二つ年上。失礼のないようにしなければ!


「そして佐藤様は――」

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