魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
クラスメートの身内だから断りづらい――それは、決して嘘ではなかった。少なからず理由として残ってはいて、蓮様はそこを考慮して下さったのだろう。だったら自分がモデルを、と提案なさった。一も二もなく賛成し、茜さんに連絡を取ったというわけである。
「勝手なことをして申し訳ありません。でも、私より蓮様の方が適任だと思います」
私は彼を女性のようにメイクすることしかできないけれど、メンズのメイクはまた違う。純粋にそれでどうなるのかを見てみたいという気持ちもあった。
茜さんは目を細めると、「まあそれはいいけど」と寛容に頷く。
「どうしてこんなお坊ちゃんと君が一緒に? どんな伝手使ったの?」
「ええと……」
ちらりと蓮様の方を窺う。
素直に言っていいのだろうか。椿様の時は理由が理由とはいえ、あまり言って欲しくなさそうだったけれど。
躊躇する私をよそに、蓮様が切り出した。
「彼女はうちの使用人で、今は僕の専属執事として働いてもらっています。モデルの件も、メンズコスメなら女性より男性の方が適していると思いますが」
口調は丁寧だけれど、どことなくぴりついている。蓮様のこんなところを見るのは初めてだ。
「……へえ。専属執事、ね」