魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
カメラマンやスタッフが横切っていく。
天気の話をするかのような軽やかさをもって、でもその内側には確実に重厚さを秘めている。茜さんの問いに、ゆっくりと息を吐き出した。
「……すみません。まだ、ちょっと」
判断を下すには、何もかもが尚早に思えた。どちらの選択が相応しいのかも、正直今の自分では見極めがつかない。
「まあ急かすつもりはないんだけど、……あんなに敵対視されるとちょっと揶揄いたくなっちゃうよね」
「はい?」
「何でもないよ。僕としては、もちろん前向きに考えてくれたら嬉しいって話」
はあ、だの何だの、曖昧な返事をして頷いておく。
茜さんはそこで一度会話を切り上げ、「来たよ」と私に目配せした。
「わぁ……」
廊下の奥から姿を現した蓮様は、真っ白のセットアップに身を包んでいた。
淡いピーチピンクのアイシャドウとリップだろうか。遠目から見る分には、さほど化粧っ気のない仕上がりである。全体的に色素の薄い彼にしたら、確かに血色感はいいな、といった具合だ。
「……天使みたい」
思わず独りごちると、茜さんが勢いよく噴き出した。
「な、何で笑うんですか!?」
「いや、よく素でそんなこと言えるなと思って」