魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
だって、本当にそう見えたんだから仕方ないじゃない。
儚くて清廉で、彼の纏う空気だけがひどく透き通っているようだ。後ろに羽が生えていてもさほど驚かないくらいには。
それから撮影が始まり、茜さんはてきぱきと指示を出していた。
私は隅の方で見学することしかできなかったけれど、何度も切られるシャッターにこちらまで緊張してしまう。やっぱり、自分では務まりそうにない。蓮様に受けてもらって正解だ。
「うーん……」
一通り撮り終えて写真を確認しつつ、茜さんが唸る。
何か不備でもあったのだろうか。やや軽い気持ちで状況を窺っていると。
「なーんかさあ、華がないんだよね」
ひっ、と喉奥で悲鳴が上がりかけた。茜さんが放った爆弾発言に、場が凍りつく。
慌てて蓮様の元に駆け寄り、私は必死に訴えた。
「す、すっごく素敵でしたよね!? 遠くからでも分かりましたよ、真っ白で綺麗で透明感があって……!」
しかし茜さんは顎に手を当て、更に首を捻る。
「なんだろ、綺麗すぎるのかな。……あー、分かった。表情が硬い」
「えっ」
やっぱり緊張されて……?
表情に関しては私が力添えできそうなことはないし、むしろ私があまりにも凝視しすぎたせいで支障をきたしている可能性はある。
「蓮様……私、一旦外しましょうか?」