魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
椅子に腰を下ろした彼の背後に立ち、恐る恐る口を開く。
何だか、今日は彼の機嫌がずっと良くない。それを証明するかのように、蓮様は唐突に呟いた。
「随分仲が良いんだね」
「え?」
鏡越しの彼が、視線を上げて私を緩く睨む。どうやら本格的にご立腹だ。
「百合って何。何で名前で呼ばせてるの」
「そ、それは……」
「あと、距離近いんだけど。もっと離れて」
低い声で指示され、かしこまりました、と戸惑いつつも頭を下げる。
もしかして蓮様は、茜さんのことがあまり得意ではないのかもしれない。それとも、本来私が引き受けるべきだったことをやらせてしまった挙句、文句を言われたから怒っていらっしゃるのだろうか。
謝るにしても、どれに関して詫びを入れればよいか分からず、視線をさ迷わせる。
そんな私に、蓮様は「別に君に怒ってるわけじゃないよ」と息を吐いた。
「……なんか、君が他の奴の世話焼くのは、むかつく」
「え……!? いえ、あの、私がお仕えしているのは蓮様ですので……」
「だったら、あいつと話してないで僕のこと見とけばいいじゃん」