魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


彼の瞼が持ち上がり、濃紺の瞳が姿を現した。赤いアイシャドウとリップが、それと対比するように麗しく居座っている。

今回はあくまでメンズコスメの宣伝。シルエットに丸みをもたせたり、唇をぷっくり見せたりすることはせずに、男性的な輪郭や骨格を活かしたかった。柔らかい色使いよりも、レッドメイクで目鼻立ちをくっきりさせることで、凛々しい印象を与えることができるのではないかと思ったのだ。


「蓮様?」


黙り込んでしまった彼に、使ったコスメの蓋を閉めながら呼びかける。


「どうかされましたか?」

「……いや、普段と違う感じだと思って」

「そうですね。今は『変装』ではなく、『美装』ですから」


蓮様が顔を上げた。何か新しいことを発見したときのように、その表情は少しの驚きと明るさに満ちている。


「お化粧って、人によって意味合いが変わりますし、それでいいと思うんです。身なりを整えるため、気分を上げるため、あるいは仕方なく……人の数だけ、お化粧の種類もありますから」

< 200 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop