魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
私はただ、娯楽として扱いたかった。一種の逃げ場のような、そんなもの。でもきっと、戦うためにメイクする人だっている。
仕事のため、人のため、お金のため――理由なんて人それぞれ。でもそれでいい。きっとみんな、自分が自分であるためにオシャレを時には「武装」して、鏡に向かって微笑むの。
「自分を守るためにするお化粧は、どんなに自分を偽ってもいいと、私は思っています」
『時々、自分以外の何かになりたくなる。……いや、今の自分を置いて、どこか遠くに行ってしまいたくなる』
逃げてしまいたい。あの時の彼は、確かにそう言っているような気がした。
違う自分になること。オンナノコになること。それが彼自身を守り保つのなら、メイクだって一つの大切な武器で、逃避行なのだ。
「でも、『自分』を見て欲しい時にするお化粧は、その人が一番輝ける姿であることが大切だと思いませんか」
自分自身を殺さず、最大限胸を張れるように。「変身」じゃない。解けた後、「誰?」なんて、悲しい質問が飛び交うことのない、ささやかで可憐な魔法。
傲慢かもしれないけれど、私は彼に、そんな魔法をかけたかった。
「オンナノコでも、オトコノコでも、蓮様は蓮様ですけれど……お化粧にマイナスのイメージがついてしまうのは、悲しいので」