魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


茜さんの言葉に思わず周りを見渡せば、いかにも。女性だけではなく男性スタッフも、ほう、と息をついて彼に魅入っていた。

蓮様に視線を戻すと、彼の瞳が私を真っ直ぐ捕らえる。それは目を離したことを咎めるような色を秘めていて、意図せず背筋が伸びた。

それから、彼の唇が動き――ゆ、り、と。一つずつ確かめるように呼ばれ、心臓を鷲掴みされたかのような衝撃が脳を貫いた。


「……え、ぁ、」

「なに、変な声出して」

「いえ、何でも……」


どうしよう。目を離せない。
このまま彼を見続けたら、心臓が壊れてしまう。それなのに体は動いてくれないし、彼だってきっと、私が彼から目を離すことは許さない。

どこもかしこも、とっくにオーバーヒートしている。
シャッターが切られる度、私の中でも彼の形様が刻まれていくようだった。

こうして、蓮様がモデルを務めた茜さんのコスメブランドの広告が完成し、あっという間にメディアを通して全国へ。
それは売り上げ貢献と同時に、「五宮蓮」というブランドも知らしめることになったのだった。

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