魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


ミーハー枠代表の楓がフォーク片手に声色を明るくする。

茜さんの手掛けるブランド「a Nake」が大々的に打ち出したプロモーションは、駅前のディスプレイなどにも広く映し出された。SNSでも話題になり、ネットに蓮様についてのまとめ記事がアップされていた時には非常に焦ったし驚いたものだ。

もちろん学校内でもその勢いは止まらず、ただでさえ有名であった彼は、ますます騒がれるようになった。それこそアイドルのように。


「お兄様が花城様のことをお話していましたわ。あのメイク、花城様がなさったって」


そう告げた三園さんに、楓は「えっ」と口元を押さえる。


「そうだったの!? やっだ、百合はやく言ってよ! あの真っ赤なリップ、セクシーだよねぇ」

「私も思わずどきどきしてしまいましたわ……五宮様もあんな表情をされるのですね」


きゃっきゃと盛り上がる二人を眺め、ぼんやり思考を巡らせた。
こんな風に蓮様へ憧れを抱いた女の子は、きっと全国にごまんといる。私だってその一人なのだから。

メイクをしたって蓮様は蓮様。悲しい目をしないで、自信を持って欲しい。沢山の人に認めてもらって欲しい。
確かにそう思っていたはずなのに、なぜだろう。こうして大勢の人が彼のことを話題にしているのを見ると、少し複雑だった。


『百合』

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