魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
気遣わしげに感想を述べた草下さんに、申し訳なくなった。
はい、まあ、と曖昧に返事をして俯く。
竹倉さんは眼鏡をつと押し上げると、「本題に入りますが」と声色を整えた。
「お二人には、専属執事をお願いしたいと思っております」
「……はい?」
いま、なんて? そう聞き返さずにはいられない、問題発言である。
しかし当の本人である竹倉さんといえば、涼しい顔で淡々と続けた。
「といいますのも、今回執事を募集していたのは、ご主人様と奥様が半年間海外に行かれるからなのです。ご主人様の海外出張に、奥様も同伴なさるということで」
と、そこまで話を聞いて、私は首を傾げる。
だとしたらこの豪邸には今、主人が誰もいないということ。それなのに、一体誰の専属執事を?
「そこで、草下様には五宮家のご長男、蓮様の専属を、佐藤様にはご次男、葵様の専属執事をお願いしたく存じます」
「え……」
まさか、大事なご子息様の専属執事を!?
「そ、そんな重要なお仕事、見習いである私たちになんて……」