魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
椿様とは例の一件以来、一度も話していない。蓮様といるところも見かけないし、やはり二人は未だに関係の修復を図れていないということだろう。
何となく沈んだ気持ちになっていると、楓が「どうするの!」と声を張り上げた。
「もし絡まれたりしたら、百合絶対に手上げちゃうじゃん!」
「私を何だと思ってるの……」
確かに、普段人を守る立場として生活している分、咄嗟に技をかけてしまう可能性がないとも言い切れない。
とはいえ、穏やかに過ごすためにもパートナーを見つける必要はある。あまりパーティーに乗り気ではなくて、途中で離脱しても問題のないような人。
「あ、私もう行かないと」
椅子を引いて立ち上がる。相変わらず雨は憂鬱で蓮様の表情も暗いけれど、彼を校門前で待たなければ。
「いざとなったら私も協力するからね!」
「うん……ありがとう」
楓に手を振り、教室を後にする。
さてどうするか、と思考は必然的にパートナー探しへと流れた。
そのせいかもしれない。ぼんやりと立ち尽くし、背後からの気配に全く気が付かなかったのだ。
「――佐藤」
「はっ、はい!」