魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
反射的にそう嘆くと、のし、と右肩に草下さんの手が乗る。
「おーおー、一緒にしないでくれるかお嬢様。こちとら本気で執事目指してる身なんだわ」
「……お嬢様じゃないです」
「はいはい悪かったよ」
隣の彼を下から睨みつければ、意外にもあっさりとよけてくれた。
自分がほんの少しだけ短気な自覚はある。
「俺は構いません。むしろ光栄です。是非やらせて下さい」
胸を張る草下さんに、私も負けじと背筋を伸ばした。
「私も、精一杯頑張ります! やらせて下さい!」
どっちみち、帰るという選択肢はとっくのとうにないのだから。与えられた役目をきちんとこなさないと。
竹倉さんは「ありがとうございます」と事務的に頷き、それから脇に控えていた木堀さんを呼んだ。
「木堀、二人を部屋に」
「はい!」
「ではお二方、よろしくお願い致します。仕事の説明は明日から始めますので、本日はひとまずお部屋の方で荷物の整理等を行っていただければ」