魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
いつもの場所で待ちぼうけていたら、突如として蓮様が私の顔を覗き込んでくる。驚いて二、三歩後ずさってしまった。
「どうしたの。ぼーっとして」
「えっ、あ……」
「何回か呼んでも全然返事しないし」
「ええっ!? それは大変失礼致しました! あの、少々考え事を……」
しておりまして、とそこまでは言えなかった。
私が後ずさった数歩を埋めるように、蓮様が一歩、二歩と近付いてくる。
「考え事って、何?」
「いえ、大したことではありませんので……」
「君は大したことない考え事で僕を無視してたわけ?」
うっ、と喉から潰れた声が漏れた。痛いところを突かれ、反論の余地がない。
こちらを見つめ続ける蓮様に折れて、私は渋々口を割った。
「パーティーのパートナーが、見つからなくて……どうしようかと悩んでいたんです」
正確にいうと見つからないのではなくて、今の今まで探していなかったという方が正しい。
何だそんなことか、とあっさり会話が終わると思ったのに、蓮様は依然として難しい顔のままである。彼は数秒考え込むように黙った後、「じゃあ」と切り出した。
「僕のパートナーになればいいじゃん」