魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
青天の霹靂とは、このことを言うのではないだろうか。
さらりと告げられた提案に、しばらくフリーズしてしまう。それから我に返り、慌てて首を振った。
「そんな……! 恐れ多いことでございます!」
「何で?」
「なっ、ご自分でお分かりではないのですか!? 蓮様のようなお方が私とだなんて、」
「じゃあ君はどうするの。今から他の人を探すの?」
「それは、もちろん……」
探さなければどうにもならないのだから、探すしかない。本格的にまずいことになってきたな、と唇を噛む。
「命令」
「えっ」
「って、言ったら君は僕といてくれるわけ?」
「は、はい。ご命令ですので……」
至極当然のこととして答えると、蓮様は顔を歪めた。
先程から雨がぱらぱらと降り出している。小さな水滴が彼の頬に落ちて、そのせいか、酷く哀しげに映った。
「やっぱ、いい」
顔を背けた蓮様が、自身の髪をくしゃりと掻き乱す。
「……バカらし」
「蓮様……?」
は、と薄く笑った彼の瞳が今にも雨になって零れてしまいそうで、不安が胸を掠める。
ネイビーブルーがゆっくりと、そして真っ直ぐに私を捉えた。
「命令、じゃない。パートナーは僕にして。……それが嫌だったら、来なくていいから」