魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


青天の霹靂とは、このことを言うのではないだろうか。
さらりと告げられた提案に、しばらくフリーズしてしまう。それから我に返り、慌てて首を振った。


「そんな……! 恐れ多いことでございます!」

「何で?」

「なっ、ご自分でお分かりではないのですか!? 蓮様のようなお方が私とだなんて、」

「じゃあ君はどうするの。今から他の人を探すの?」

「それは、もちろん……」


探さなければどうにもならないのだから、探すしかない。本格的にまずいことになってきたな、と唇を噛む。


「命令」

「えっ」

「って、言ったら君は僕といてくれるわけ?」

「は、はい。ご命令ですので……」


至極当然のこととして答えると、蓮様は顔を歪めた。
先程から雨がぱらぱらと降り出している。小さな水滴が彼の頬に落ちて、そのせいか、酷く哀しげに映った。


「やっぱ、いい」


顔を背けた蓮様が、自身の髪をくしゃりと掻き乱す。


「……バカらし」

「蓮様……?」


は、と薄く笑った彼の瞳が今にも雨になって零れてしまいそうで、不安が胸を掠める。
ネイビーブルーがゆっくりと、そして真っ直ぐに私を捉えた。


「命令、じゃない。パートナーは僕にして。……それが嫌だったら、来なくていいから」

< 221 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop