魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
a Lotus blossom
『蓮様は、シンデレラですよ。何もおかしくないです。私が今まで出会った中で、一番綺麗だったんです』
彼女を最初に見た時、随分綺麗な男がいるものだと思った。しかしそれはすぐに間違いだと気付く。
華奢な肩幅に、骨ばっていない丸みを帯びた手。何より、近くで見れば見るほど、真っ黒な瞳が彼女の可憐さを物語っていた。
黙っていれば可愛らしいのに、だなんて、そんなことを言う柄ではないし、言うつもりもない。
彼女の口から時折飛び出すのは、突拍子もない言葉。好きなもののことになると周りが見えなくなるのは、長所なのか短所なのか。
だけれど、その強引さとひたむきさを持ち合わせた彼女を、羨ましいとも思う。
『じゃあ、新しいおとぎ話をつくりませんか』
どんなに本のページを捲っても、王子は最初から最後まで王子だった。当たり前だ。魔法をかけられるのはシンデレラで、それは絶対に変えられないのだと思っていたのに。
『いいよ。君は魔法使いね』
いま目の前に、君は現れた。君が魔法をかけるのは、シンデレラじゃない。王子でもなくて、僕だという。むしろ、僕がシンデレラなのだと、真面目な顔で手を握った。